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2014年05月09日 17時00分

ダイヤモンド・オンライン連載企画/悪徳住宅業者に騙されないための法律知識

ダイヤモンド・オンライン連載企画/悪徳住宅業者に騙されないための法律知識

瑕疵を放置していれば命にかかわることも!悪徳住宅業者に騙されないための法律知識アベノミクスによる景気回復で、昨年秋頃からマンションや戸建住宅は飛ぶように売れた。消費増税が4月に行われるため、駆け込み需要もあったようだ。

念願のマイホームを手に入れた人も多いことだろう。年明けからは、昨秋に住宅を購入した人が物件の引き渡しを受けて、引っ越しをしているようだ。しかし、その住宅でもし、瑕疵(かし)が見つかったらどうすればいいのだろうか。今回は、住宅の瑕疵について、どのように対処すべきかを、欠陥住宅など建築紛争の解決に定評のある鐘築優弁護士に解説してもらった。

●床や天井裏のボルトの欠落……瑕疵を放置すれば命にかかわる


多額の借金をしてやっとマイホームを手に入れたにもかかわらず、そのマイホームに瑕疵(かし、欠陥とほぼ同じ意味)があることが発覚した場合、マイホーム購入者の落胆はどれほどのものだろうか。


例えば、私が実際に経験した案件では、以下のような瑕疵があった。


・床のきしみ・床の不陸(凹凸)・1階土台アンカーボルト(木造土台をコンクリート基礎に緊結するための埋込ボルト)の欠落・ホールダウン金物(木造建築物のコンクリート基礎と木造部分を緊結し、強・風や地震時の建物浮き上がりを防止する重要な金物)の欠落・火打材(土台、桁(ケタ)の欠落・梁(ハリ)など水平材が直交する部分を補強する斜め部材の欠落・床下の束が基礎から外れている・筋かい金物の欠落・天井裏の境界壁の欠落


挙げだしたら、きりがない。こうした瑕疵があった場合、建物は地震によってすぐ倒壊してしまう危険がある。瑕疵物件は、命にかかわる重大なものであることを、肝に命じておきたい。

●引き渡しから10年間瑕疵担保責任を問える


厄介なのは、これらの瑕疵は、普段の生活からは目に見えない部分であることがも多いため、住んでいる人は瑕疵の存在を知らずに放置して、重大事故につながってしまうおそれがあることだ。


瑕疵が発見された場合、どうすればよいのだろうか。


なお、「瑕疵」とは、当事者と契約上定めた性質ないし状態、または建物として通常有すべき性質ないし状態を、備えていないことをいう。


これら欠陥住宅は、建築基準法20条(構造耐力)第30条(長屋または共同住宅の各戸の界壁)、建築基準法施行令41条(木材)、42条(土台及び基礎)、45条(筋かい)、47条(構造耐力上主要な部分である継手または仕口)、114条(建物の界壁・間仕切壁及び隔壁)などに違反しているといえる。このような場合、瑕疵があるといえる。


施工者あるいは建築士(設計者)は民法上の瑕疵担保責任(民法634条1項、2項)を負う。この責任は帰責事由がなくても責任を負う無過失責任で、例外的規定となる。


民法の規定では、注文住宅の場合でも、建売住宅・分譲住宅の場合でも、引渡の時から5年間または10年間の瑕疵担保期間が定められていたが(民法638条)、実際は特約で、木造建物については1年、それ以外の建物については2年間に短縮されることが多かった。


しかし、平成11年に「住宅の品質確保の促進業に関する法律」(「品確法」)が成立し、構造耐力上主要な部分または雨水の浸入を防止する部分のうち一定部分については、住宅取得者は注文住宅の場合でも、建売住宅・分譲住宅の場合でも、新築(新築に限る)住宅の引渡を受けた時から「10年間」、請負人または売主に対して瑕疵の修補や損害賠償を請求できることになった(品確法87条1項、民法634条1項及び2項前段)。


なお、リフォーム工事の場合、リフォーム工事後に瑕疵が発覚した場合、先ず、リフォーム工事の設計者ないし施工者の責任を瑕疵担保責任として追及することが多いだろう。

●現場と主任技術者の“馴れ合い”に注意


このような不動産瑕疵のトラブルを防ぐためには、きちんとした契約書を作り、注文者が建築現場に赴いて建築施工を監視することが重要である。また、業界慣例上、一社が設計・監理・施工を行うことが多いが、設計・監理・施工(設計・監理は建築士が行う)は、本来別々に行う方が互いに確認し、馴れ合いを防ぐ上で大切である。したがって、せめて工事監理者と施工者は別々にする方がよい。


なお、建設会社は建設業法26条により、工事現場の施工の技術管理をつかさどる主任技術者を置かなければならないことになっている。そのため一応表面的には各工事に技術者が付いた形はとっているが、受注件数の多い会社では、主任技術者1人で7~8ヵ所の現場を掛け持ちするケースもある。そうなると、工事現場にはせいぜい1週間に1度、しかも短時間しか現場の技術監理を行わない例もかなりある。


そして、私がこれまで手がけてきた事案では、この技術監理者がしばしば下請などと雑談にふけり、全く馴れ合いとしか見られない場合もある。本来の仕事である技術監理、監督をするという緊張感は微塵も感じられないことが多々あった。


ひどいケースだと、住宅取得者が指摘した不良箇所が完全に修復されたか否か未確認のまま、被覆して隠蔽してしまったりする。馴れ合いがはびこっている工事現場では、主任技術者任せにするのではなく、指摘した不良箇所が完全に修復されたことをしっかりと住宅取得者自身も確認することが重要である。

●証拠写真は必ず撮影すること建築士による瑕疵の確定を


契約書を作り、主任技術者がきちんと工事現場の監理をしていても、残念ながら瑕疵は発生するものだ。そのときは、どのような対応をすべきであろうか。


まず、瑕疵が確定するまでは、決して施工業者は入れず、建物の保存をすることが大切である。施工業者が瑕疵の露見を避けるため、補修工事の名を借りて瑕疵を隠してしまうことがあるからである。


また、瑕疵の個所を写真で撮影しておくことも重要である。瑕疵が隠れて見えないような時には、建物の一部を開口し瑕疵の写真を撮る必要があるが、これは次に述べる一級建築士にやってもらった方がよいであろう。


次に、一級建築士を探す。知り合いに一級建築士がいない場合は区役所や市役所の建築課や日本建築家協会などで照会してもらうことができる。


そして、瑕疵が確定したら、施工業者と交渉することになる。しかし、施行業者は「補修すれば十分に対応できます」と言うことが多い。しかし、補修の内容が本当に妥当なのか、互いの認識の違いから争いに発展したり、もしかしたら補修で間に合わない瑕疵については、建て替えなども請求しなければならないこともある。


その場合には弁護士に相談して、場合によっては仮処分申立や訴訟提起を行う。


なお、訴訟は元請会社だけでなく、下請会社に対しても行える。この場合、民法44条1項または民法709条の不法行為責任、場合によっては会社法429条1項、430条の第三者に対する責任によって追及することができる。

●民法635条但書が業者の甘えを生み出している


訴訟になる場合には、時効期間に気をつけるべきだ。前述した品確法ができた現在は、その時効期間10年である。ご自身の建物が引き渡しを受けてから何年経っているか、まずは確認してほしい。


また、瑕疵について施行業者と何らかの和解をしているような場合(瑕疵の損害賠償をいくらにするかなど)や、当時の瑕疵の写真などが存在しない場合は、訴訟を進めていく上で、証拠がないので不利となる場合がある。


瑕疵と疑われるような不良箇所があったら、後々のことを考えて念のため写真を撮っておくことをお勧めする。


また、費用の件も、よく考えていただく必要がある。建築紛争は対象が建物であり、高価なものであるケースが多い。そのため、弁護士費用も高くなることが多いのだ。


軽微な瑕疵ならそれほど心配することはないが、建て替えをしなければならないような瑕疵である場合は、弁護士費用も高額となる。具体的には、建て替え費用相当額(施工業者にとっての請負代金相当額)を、損害賠償として施工業者に請求する場合、その数%程度となり、80万円を下らない。


しかし、欠陥住宅で一生不安な状態で過ごすよりも、ある程度の弁護士費用を払っても、訴訟を行った方がよい。瑕疵担保責任に基づく建て替え費用相当額の損害賠償について、最高裁判決(平成14年9月24日)は、「瑕疵が重大な場合、民法634条2項の瑕疵担保責任に基づき、建て替え費用相当額の損害賠償を請求できるとする」としているからだ。


民法635条の但書には、「建物その他土地の工作物については注文者は解除できない」となっている。これは完成した建物を除去することは請負人にとって酷であり、社会経済的損失も大きいからであるとされる。


一方で、この規定が施工業者の甘え、杜撰の体質を生み出している。補修費用が建物の当初の請負金額にほぼ匹敵する場合、往々にして、施工業者は、その補修額を認めると、解除を制限した民法635条但書に違反すると反論してくる。


しかし、635条但書は単に解除を禁止しているに留まり、瑕疵修補の損害賠償の額に制限を加えるものではない。


私が過去に行った建築訴訟において、判決は、「もし、635条但書の規定を根拠に原告らの損害賠償額を制限するとすれば、より杜撰な工事を行った請負人の方がより手厚く保護されるという不当な結果を招き妥当でない」とし、請負金額相当額全額の賠償を認めた。前記最高裁もこの趣旨を踏襲したものである。


訴訟になった場合、建築紛争はある程度の期間がかかる(1~2年)。とくに、複雑な事件は裁判所の建築調停部(裁判官、弁護士、一級建築士で構成)に回され、そこで審議されるため、通常の訴訟よりは多少時間がかかる。

●気をつけるべき4つのポイント


以上であるが、不動産の瑕疵について気をつけるべきポイントをまとめると以下の通りとなる。


(1)とにかく建築士や施工業者の選定には十分気をつけること。街の立て看板などを見てすぐ選ぶのは好ましくない。


(2)建築士や施工業者との契約はきちんと行い、図面なども受け取ること。建築確認申請の図面は施工業者が持っていることが多いが、コピーでいいのでこれも受領する。


(3)現在の請負契約では、業者が下請や孫請を使うことが多い(なかには、材料から施工まで一括して下請けさせる「丸投げ」もある)。このような場合、下へ行くほど報酬も少なくなり、手抜き工事が行われる。したがって、請負契約の前に下請か孫請かなどを確認し、下請などが嫌なら拒否をする(建設業法22条には、工事の一括下請けの禁止が規定されているが、実効が薄くなっている)。


(4)欠陥に気付いたらすぐに一級建築士にみてもらい、現場を写真などで保存する。

鐘築 優弁護士
1973年3月早稲田大学政経学部卒。79年10月司法試験合格。82年弁護士登録。89年鐘築優法律事務所開業。東京弁護士会所属。東京弁護士会法友会 東京弁護士会業務改革委員会副委員長。医療過誤、欠陥住宅、中小企業の債権回収、事業承継(後継者の確保問題)、事業再生などについて力を入れている。
所在エリア:
  1. 東京
  2. 新宿
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